セックスレス、未婚、少子化が先進国で共通の問題であることは今日、世界的に広く認識されつつあります。しかしこれらの問題に関する研究はその深刻さにもかかわらず、驚くほど少ないのが現状です。世界に先駆けてこれらの問題が表面化したのは1990年代後半の日本ですが、日本では本格的な取り組みが無いまま出生数は減る一方で、現在のペースで日本の出生数が減れば18年後には出生数がゼロになるでしょう(出生数のデータはこちら)。この点については今までイーロン・マスクが何度か懸念を表明していて、「日本は消滅する」と予言しています。出生数ゼロは国家の存亡に関わる危機的事態です。しかし当の日本人はまったく問題視していません。本格的な取り組みがないことはもちろん、研究者も存在せず、当然、危機を呼びかける人もいません。これは現代人にかけられたマインド・コントロールがあまりにも深いことを意味しているでしょう。現代人はセックスのタブー視が強すぎて、真面目に研究することすら出来ないのです。
セックスレス・未婚問題に関して研究者が存在しないことを明らかにするために、まず欧米人がこれらの問題に気が付いた経緯を解説します。欧米人は当初、日本のセックスレス問題を日本だけの特殊な問題として認識していました。欧米人は日本人に対して変態オタクのイメージがあり、このセックスレス問題も日本人の変態志向と結びつけていました。こちらは2013年のイギリスBBCの取材ですが、タイトルが欧米人のスタンスを表しています。
そんな中、同じく2013年に発表されたイギリス、ザ・ガーディアン紙の記事が論争を巻き起こしました。
それまで通り「日本人は変態だ」で片づけようとするこの記事に対し、「その通りだ」「いやそうではない」の議論が起きたのです。
”これは日本にしか起こらない奇妙な現象です。”
”これは海外の編集者が大喜びする奇妙で変わった日本というお話 の典型だ” ”日本の人口問題は研究するに値する”
そしてこの論争を決着させたのが、その翌年の2014年に発生したアイラビスタ銃乱射事件です。カリフォルニア在住の22歳、白人アジアハーフのエリオット・ロジャーは自分が女性に相手にされないことを社会の責任として復讐を計画し、長大な声明文とビデオ告白を作成した後に6人を無差別殺害して自殺しました。
この事件はセックスレス未婚問題を日本だけの問題として笑っていたアメリカ人に強い衝撃を与え、インセル(非モテ)の存在を全米に知らしめるとともに、インセル問題が他人事ではなくアメリカ人自身の問題であると認識させる結果となりました。そしてこの問題に関心を持ったアトランティック誌(アメリカで160年の歴史を持つ)の上級編集者、ケイト・ジュリアン女史は独自に取材を始め、その結果を記事にしました。この記事は大手メディアに一斉に取り上げられ、「セックス不況」と言う言葉が定着させる結果にもなりました。39ページに及ぶ長いこの記事の中で筆者は取材の過程で聞いたセックスレスの原因をひとつひとつ紹介しています。
”性研究者、心理学者、経済学者、社会学者、セラピスト、性教育者、そして若者たちと多くの会話をする中で、私が「セックス不況」と呼ぶようになったものについて、様々な説を耳にしました。ナンパカルチャー、圧倒的な経済的プレッシャー、不安率の急上昇、精神的脆弱性、抗うつ薬の蔓延、ストリーミングテレビ、プラスチックから漏れ出す環境性エストロゲン、テストステロン値の低下、デジタルポルノ、バイブレーター、出会い系アプリ、選択過多、ヘリコプターペアレント(甘やかし)、キャリア主義、スマートフォン、ニュースサイクル、情報過多、睡眠不足、肥満などが原因かもしれないと言われました。現代の汚点を一つ挙げれば、どこかの誰かが、それをセックスレスと結びつけるでしょう。"
『なぜ若者のセックスはこんなにも少ないのか?』2018年、アトランティック
https://www.scribd.com/document/730461152/Young-People-Are-Having-Less-Sex-The-Atlantic (全文はこちら)
同じく2018年、日本でも問題解決の動きがあるにはありました。ただし日本の問題解決は原因の究明ではなく、資本主義的なアプローチでした。セックスレスで悩む女性のため、女性向け風俗が登場したのです。それまでも女性向けの性的なサービスは細々と存在してはいたものの(出張ホスト)、出張ホストが提供するサービスはあくまでもデートであって、性的な満足が確約されていたわけではありませんでした。しかし新しく登場した女性向け風俗は女性の性的満足をサービスの中心として打ち出したのです。性的満足を提供する以上、「セラピスト」と呼ばれる男性たちは仕事を始める前に徹底的なベッドテクニックの研修を受けなければなりません。この事前研修こそが、それまでの出張ホストと決定的に違う点です。女性向け風俗はビジネス界の隠れた大ヒットとなり、短期間で大儲けをした創業者は2024年に3億円の脱税で逮捕されました。
さて、以上がセックスレス問題をめぐる日本とアメリカの大雑把な流れです。そしてこの流れを見れば、18年後に出生数がゼロになるという危機的状況に対して解決への動きがないことはもちろん、研究すら無いに等しいことが想像できると思います。ネットポルノが原因だと言う意見はよく聞きますし、その影響が深刻であることは事実です。政府調査によると日本人男子20代の半数はアダルト・ビデオからセックスを学んでいて、AVの嘘のセックスを正しいセックスだと思い込んでいます。そして多くの若い女性が「セックスは痛いだけ」と訴えています。また、セックスレスに悩む妻の多くが「夫はポルノ中毒で自分に触ろうともしない」と訴えています。このネット・ポルノ問題は極めて深刻であり、解決されるべき問題ではありますが、これがセックスレス・未婚問題の根本原因かと言えば、それは違います。ポルノはリアルなセックスの代替手段であり、リアルなセックスがあまりにも難しくなったため、誰もが手を出すようになりました。そしてそのあまりの手軽さによって、いつのまにか代替手段が目的化したのです。ポルノを禁止すれば若者がリアルなセックスを始めるかと言えば、それはは疑わしく、そもそも今や禁止すら難しい段階だろうと思います。
ネット・ポルノ以上に大きな原因はフェミニズムです。そもそもなぜ日本が世界に先駆けてセックスレスになったのかと言えば、それはフェミニズムが原因なのですが、このことは世界的に全く認識されていません。第2次大戦後、日本を占領したマッカーサー元帥は日本の首相に対して5つの改革を要求し、その一つがフェミニズムでした。そしてこれはマッカーサーにとって大きな意義がありました。なぜならアメリカにとって日本占領は「人種的に劣等な他者を文明化し民主化するというプロジェクト」であり、その文脈において女性の解放はデモンストレーション効果の高いものだったからです。
占領当局は、日本人女性を何世紀にもわたる「東洋の男性優位主義」の犠牲者と見なし、封建的伝統、後進性、文明の欠如を体現する存在とした。無力な有色人種の女性として、彼女たちはアメリカによる救済と解放の理想的な候補者となった。
しかし、西洋と東洋は根本的な発想が異なり、日本女性が本当に虐げられた存在だったかと言えば、それは疑わしいでしょう。むしろ江戸時代の女性は西洋女性こそ虐げられた存在だと見ていました。このあたりの議論は長くなるので別のページで改めて取り上げるとして、とにかくマッカーサー占領軍によって日本のフェミニズムは過剰となり、男性は女性を口説くモチベーションを失い、世界に先駆けてセックスレスな国になりました。
では、セックスレス・未婚問題の根本原因とは何か?キリストがなぜ偉大だったかと言えば、愛を肯定してお金を否定したからでしょう。私はこのキリストの考え方を敷衍(ふえん)して、愛とお金はトレードオフだと考えます。トレードオフとは、何かを手に入れれば何かを失う関係性のことで、ここでは「お金を追求するなら愛をあきらめ、愛を追求するならお金をあきらめる」という意味になります。マルクスは資本論で次のように言っています。
「資本は労働者を相互に競争者として対立させることによって、彼らを分断し支配する。」
資本主義は人と人とが支配し、服従し、競争し、対立する過酷な世界です。そしてその過酷な世界は以前は男だけの世界でした。男は外の過酷な世界でお金を稼ぎ、女性は家で子供に愛情を注ぐと言う明確な住み分けがあったのです。しかしフェミニズムをきっかけとして女性が資本主義に参入しました。これによって社会全体にお金は増えたかもしれませんが、家で愛情を担当する人はいなくなりました。家庭からは愛が失われ、多くの子供たちが愛情不足を原因とする不安症や自己否定に悩むようになりました。そして男女は助け合う存在ではなく、同じ労働者として競争し、対立する存在になりました。これこそがセックスレス・未婚問題の根本原因だと私は考えます。
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